
ご存知の方もそうでない方も、私はシングルマザーとして17年間、母親業は19年間してきました。過去12年間においては、国際離婚後ドイツに再移住してドイツで子育てをやり切り、昨年やっと子育てがひと段落したところです。(詳細はプロフィールをご覧くださいね)
そんなひと段落した私ですが、今更ドイツの子育て支援の全貌をメモがてらリスト化しておきます。ここでいう「子育て支援」とは国からの支援制度になります。
今まで住んだ経験があるのは、バイエルン州(Bayern州)とバーデン・ヴュルテンベルク州(Baden-Württemberg州)のみなのですが、恐らくドイツ国内で同じ支援かと思われます。年が変わるごとに金額が変わる場合もありますので、その都度調べていただくのが一番かと思います。
また、一人親家庭や低所得家庭の場合にも支援制度がありますので、そちらも併せてまとめています。
【目次】
子育て支援制度の種類は6個もある!
まず、ドイツに住民登録がある方がもらえる子育て支援制度には、以下の6つがあります。
- 育児手当(Kindergeld)
- 育児休業手当(Elterngeld)
- 児童手当(Kinderzuschlag)
- 養育費前払い制度(Unterhaltsvorschuss)
- 住宅給付金(Wohngeld / Wohngeld-Plus)
- 市民手当(Bürgergeld )
1つずつ、サクッと解説していきます。
1. 育児手当(Kindergeld)
1.1 Kindergeldの基本情報
Kindergeld(育児手当)は、子どもがいる家庭に支給される手当です。この支援金は、親の収入に関係なく支給されます。
1.2 支給金額と条件
- 支給金額: 子ども1人当たり、毎月255€が支給されます(2025年1月1日より)。この金額は年を重ねるごとに徐々に上がってくれていて、私が渡独した2012年にはまだ月184€でした。昨今のインフラの影響で、2025年は昨年に比べて5€上がりました。(参考URL) ちなみに表の通り、第2子、第3子にはさらに増額されるため、子どもが増えるとその分手当も増えていましたが、2023年からは一律金額になっています。子供2人で月510€、3人で月766€、4人で1020€です。

- 支給条件: 子どもが18歳未満であること(学生や研修生の場合は25歳まで)。親が子供と同じ州に住んでいることが基本です。※ちなみに学校を卒業して学生ではない場合は、この育児手当支給はストップします。Familienkasseから、大体10年生が終わる頃と、12年生が終わる頃に、子供の進路状況の調査書が届きます。
1.3 申請方法と必要書類
- 申請方法: Kindergeldは、各州の「Familienkasse(家庭手当局)」に申請します。オンラインで申請が可能ですが、必要書類を提出するためには、郵送や直接オフィスに行く必要がある場合もあります。
- 必要書類: 子どもの出生証明書、家族の住民登録証明書、親の身分証明書(パスポートや身分証)などです。
2. 育児休業手当(Elterngeld)
2.1 Elterngeldの基本情報
Elterngeld(育児休業手当)は、育児休暇を取った親に支給される手当です。特に、育児休業中に収入が減ることを補填するための支援金で、妊娠・出産前後の働くママさんパパさん、またはシングルペアレントにとってもとても重要な支援となります。
2.2 支給金額と条件
- 支給金額: Elterngeldの支給額は、親の収入に基づいて計算されます。通常は月収の65%~100%が支給され、上限は1,800ユーロ、下限は300ユーロとなっています。親の前年度の収入に基づいて支給額が決まります。ただし、親の収入が低い場合は、支給額が多くなりますし、高収入の家庭では支給額が少なくなることがあります。
- 支給条件: 親(申請者)が子どもと一緒に過ごす時間を確保していることが基本です。育児休業中は、親がフルタイムで働かず、一定の時間は育児に専念していることが求められます。育児休業は最長14ヶ月間支給され、夫婦で分け合うことができます。つまり、育児休業を取ったママでもパパでも申請することができます。また、専業主婦ママでもパパが育休を取らないのであれば、最長12ヶ月間、最低額の月300€が支給されます。
2.3 申請方法と必要書類
- 申請方法: Elterngeldの申請は、州内の「Elterngeldstelle(育児休業手当局)」で行います。オンライン申請も可能で、詳細な書類を提出する必要があります。
- 必要書類: 出生証明書、収入証明書、雇用契約書や労働時間の証明書、親の身分証明書などです。
余談ですが、Elterngeldの中にはあまり知られていませんが、以下2つもあります。
ElterngeldPlus(育児休業手当プラス):
- 子どもが生後2歳になるまで、仕事を部分的に再開した場合に適用される。
- 支給金額は通常のElterngeldよりも少なくなりますが、支給期間が長く(最大28ヶ月まで)延長されます。
Partnerschaftsbonus(パートナーシップボーナス):
- 両親が同時に育児休暇を取り、育児と仕事の両立をしながら過ごす場合に支給される追加の手当です。
- 条件を満たすことで、支給金額が追加されます。
3. 児童手当(Kinderzuschlag)※低所得家庭向け
3.1.Kinderzuschlagの基本情報
Kinderzuschlag(児童手当)は、ドイツにおける子育て支援制度の一つで、特に低所得の家庭に対する経済的なサポートを提供するための手当です。主に家族が生活費を支払う際の負担を軽減するために設けられていますが、所得制限があるため、すべての家庭が受け取れるわけではありません。こちらの手当を受給している家庭は、Kita(Kindertagesstätte / 保育園Kinderkrippe、幼稚園Kindergartenの総称)の支払いは免除されます。
3.2 支給金額と条件
- 支給金額: Kinderzuschlagの金額は家庭の収入や子どもの数によって異なりますが、最大で毎月297€(2025年1月1日より)支給されます。(参考URL)
- 支給条件(対象者): 主に、両親の収入が一定以下の家庭に支給されます。収入が十分に高くないが、失業手当や社会保障に頼るほど低くはない家庭が対象となります。具体的には家族(夫婦)の総収入が900€以下、またはひとり親家庭の収入が600€以下の家庭が対象です。また、子どもが18歳未満(または、一定の条件を満たす場合は25歳まで)であり、学校に通っている、または職業訓練を受けている必要があります。
3.3 申請方法と必要書類
- 申請方法: Kinderzuschlagの申請方法は、「Familienkasse(家庭手当局)」またはオンラインで申請できます。家庭の状況に応じて、税務署や社会福祉事務所が支援を行うこともあります。
- 必要書類: 申請時には、収入証明書、住民登録証明書、子どもの出生証明書などの書類が必要です。
4. 養育費前払い制度 (Unterhaltsvorschuss) ※シングルペアレント向け
4.1 Unterhaltsvorschussの基本情報
養育費を支払う義務がある親が養育費を支払わない場合、政府がその代わりに養育費を前払いして支給する仕組みです。この制度は、子どもに必要な経済的支援を確保することを目的とし、子どもが18歳になるまで支給されます。ただし、支給は親が養育費の支払いを始めると終了します。もし養育費の支払い義務者が養育費を支払うようになると、その分の額が調整されます。養育費を支払う義務のあった親が死別した場合でも申請できます。
4.2 支給金額と条件
- 支給金額: 支給される金額は、子どもの年齢や家庭の状況によって異なりますが、2025年1月1日からの支給額は以下の通りです。つまり、0-5歳まで:月227€、6-11歳まで:月299€、12-17歳まで:月394€。(参考URL)

- 支給条件(対象者): 主にシングルペアレントが対象で、養育費の支払い義務がある親(通常、子どもと別居している親)が養育費を支払っていない場合。両親のどちらかが独身、死別、離婚している状態で同居している子供で、ドイツ国籍または移動の自由権(EU/EEA国籍)を有する者、定住許可証または居住許可証(就労許可、永住権)を持っている。
4.3 申請方法と必要書類
- 申請方法: Jugendamt(青少年局)で申請できます。オンライン申請や、所定の書類を提出して申請することが一般的です。
- 必要書類: 子どもの出生証明書親の身分証明書(パスポートやIDカード)、外国人の場合は有効な居住許可証、養育費を支払う義務がある親の収入証明や支払い履歴(支払わない場合、その証明)、住民登録証明書、生活状況に関する証明書、死別の場合は死亡証明書などです。
4.4支払義務者からの回収
Unterhaltsvorschussを受けた場合、政府は養育費を支払わなかった親から後で回収を試みます。政府は、支払義務者が支払うべき養育費を回収し、受給者(母親または父親)に支払いを戻すことがあります。
5. 住宅給付金(Wohngeld / Wohngeld-Plus) ※生活できる最低限の収入はあるが、家賃や住宅ローンが高額な場合
5.1 Wohngeld / Wohngeld-Plusの基本情報
住宅にかかる費用(家賃や住宅ローン)の一部を政府が補助するための手当で、特に収入が低い家庭や個人を対象としていますが、2025年1月から収入の限度額が大幅に上がったことにより、一定の条件を満たす場合であれば支給されます。家賃や住宅ローンの支払いが高額な場合も適用。過去に遡っては申請できませんが、申請した日付の当月1日までは遡ることができます。支給額は収入や世帯人数に応じて決定され、通常1年ごとに更新されます。(参考URL)
5.2 支給金額と条件
- 支給金額: 支給額は家賃と世帯の収入によって異なります。高い家賃を支払っている場合や、低い収入であれば支給額が多くなります。具体的な金額は、地域ごとの基準家賃(Mietstufe)や家族構成、収入状況に基づいて計算されます。管轄の市役所のHPや、オンライン上の自動計算表で、そちらを参考にされるのが早いです。
- 支給条件(対象者):規定の世帯収入限度額、世帯人数、居住地域によってレベルが異なるため表を参照ください。一番早いのは、申請してみることです。ただ、他の支援制度による支給を受けている場合は対象外。専門学校に通う学生など、企業から定期的に研修手当を受け取っている高収入の学生には、住宅手当は支給されません。
5.3 申請方法と必要書類
- 申請方法:住宅手当の申請は、居住地の市区町村の行政機関(Rathausなど)で行います。申請は通常、オンライン、郵送または直接訪問のいずれかで提出できます。
- 必要書類:収入証明(給与明細、税務署からの文書など)、家賃証明(家賃契約書や家賃の領収書)、住民登録証明書(居住証明)、扶養家族に関する書類(子どもの出生証明書)などです。
6.市民手当(Bürgergeld )※失業者・シングルペアレント向け
6.1 市民手当(Bürgergeld)の基本情報
2従来のArbeitslosengeld II(失業手当II、以前のHartz IVと呼ばれていた)の代わりとして2023年1月1日から導入された、ドイツにおける新しい社会保障制度。低所得者層に対して基本的な生活費を支援するための手当です。主に生活費の補助を目的としており、特に生活が困窮している人々(失業者、シングルペアレント、障害を持った方など)に対して支給されます。職業訓練や教育プログラム、仕事探しのサポートも提供されます。これにより、受給者が労働市場に復帰できるよう支援します。
6.2 支給金額と条件
- 支給金額: 支給額は家族構成や収入に応じて異なります。例えば、一人親家庭には月額 563€(2025年現在)が支給されます。家族全体の世帯収入が基準を満たしていない場合、世帯全員が対象になることもあります。子どもの年齢や人数に応じて支給額が増えます。(参考URL) 受給者が一定の収入を得た場合、手当は減額されます。収入が増えると、Bürgergeldの支給額が段階的に減少しますが、完全に停止することはありません。

- 支給条件(対象者):収入が最低生活基準に満たない人々が対象となります。具体的には、失業者やシングルペアレント、高齢者、障害を持った方などが主な対象となります。収入が一定額以下で、他に十分な支援を受けられない場合に申請可能です。
6.3 申請方法と必要書類
- 申請方法:Jobcenter(職業安定センター)を通じて申請することができます。申請者は、収入や財産状況を証明する書類を提出する必要があります。申請はオンラインまたは書面で行うことができ、通常、数週間で決定が下されます。また、定期的に更新手続きが必要です。
- 必要書類:申請書(Jobcenterで取得またはオンラインダウンロード)、身分証明書(パスポートまたはIDカード)、住居証明書(Meldebescheinigung)、家賃契約書(賃貸契約や月額家賃の明細)、収入証明(給与明細、年金明細など)、貯蓄や資産情報(銀行口座の残高証明)、世帯構成に関する証明(家族構成証明書など)。
一般家庭・シングル家庭の税制優遇
2025年からドイツ政府は、経済成長を促進するため、企業や家計に対する税制優遇措置を拡大する計画を承認しました。家計向けに関しては、最低課税所得額の引き上げや児童手当の増額が含まれます。(参考URL)
7.1 一般家庭向けの税制優遇
- 夫婦控除(Ehegattensplitting): 夫婦が共に課税される場合、収入差があるほど税金負担が軽減されます。
- 子供控除額(Kinderfreibetrag)の増額: 子育て世帯に対する非課税枠が、現在の9,312€から2025年には9,600€に引き上げられます。※夫婦双方が利用可能(控除額はシングルペアレントの場合と同じ)
7.2 シングルペアレント向けの税制優遇
- Alleinerziehendenentlastungsbetrag(シングルペアレント控除): 年間 4,260€が控除され、2人目以降の子ども1人ごとに 240€が追加されます。※条件: 子どもが家族の一員として住んでおり、他の親と同居していない場合。(参考URL)
- 子供控除額(Kinderfreibetrag)の増額: 子育て世帯に対する非課税枠が、現在の9,312€から2025年には9,600€に引き上げられます。
7.3 全ての納税者に共通の税制優遇
- Haushaltsnahe Dienstleistungen: 家事サービス(清掃や育児など)の費用を控除可能(最大20%、上限4,000ユーロ)
- 基礎控除額(Grundfreibetrag)の引き上げ: 2025年には、所得税が課されない基礎控除額が現在の11,604€から12,084€に引き上げられます。
- 所得税率の調整: 2025年と2026年には、所得税率がインフレ率に合わせて調整される予定です。これにより、賃金や給与の増加が物価上昇分の補填を目的とする場合、それ以上の課税は行われない仕組みとなります。
全てを考慮しての私の見解
いやはや、ここまでしっかりまとめ上げたのは初めてのことなので、時間がかかりましたが、まとめた自分が一番勉強になりました。笑
私が今まで利用してきた制度で一番長いのは、育児手当(Kindergeld)と養育費前払い制度(Unterhaltsvorschuss)ですね。
それから、移住当初は収入が少なかったので、市民手当(Bürgergeld )だったのか、住宅給付金(Wohngeld / Wohngeld-Plus) だったのか、当時その両方が合併されていたものなのか不明ですが、そちらの制度でも半年ほど助けてもらいました。
ただですね。ここまでたくさん支援制度があるから、ドイツは移住天国!だと、特にシングルペアレントでドイツ移住を考えていらっしゃる方は、くれぐれも早合点しないようにお願いします。(個人的には、子育てを手伝ってくれる親族がいない上での、ゼロからの母子・父子移住はおすすめしません。親子短期留学ならアリだと思っています)
ミュンヘンを筆頭にフランクフルトやベルリンの家賃高騰は尋常ではありません。しかも、毎年毎年エンドレスに家賃高騰が続いています。(参考URL)
以下は1平方メートルあたりの家賃コストです。例えばミュンヘンで3部屋(日本で言うところの2LDK)が80m2であれば、1749.60€(281,600円)になります(1/3のレートで1€/161円)。驚愕の高さですが、ちなみにこれは通常価格でむしろミュンヘン市内なら安い方に入るかもしれません。移住後も円で稼ぐことを主軸にするのは、まず選択肢から外した方が賢明です。

それに伴って上記支援支給額も増えているわけなのですが、最初の壁として、上記支援制度を利用するにあたっての、書類作成や準備が煩雑な上に全てドイツ語なので、時間と労力を膨大に必要とします。また、ドイツスピードですが、審査結果が出るのも数週間から数ヶ月後です。シングルペアレント目線になりますが、仮にその壁がなかったとしても、支給額で生活が潤うことはありません。カツカツ生活は続きます。
それこそひもじい思いをして、運よくワンルームに小さい子供と2人暮らしできても(大家さんにOKされるか分かりませんが)、習い事の1つくらいはさせられても、週末は徒歩圏でなんとか過ごし、四六時中こどもと一緒な上に、長期休暇はおろか仕事にも行けず地獄です(経験してます)。なので、 無料で子育てを手伝ってくれる親切な大人を、最初にどれだけ周りに作れるか、にかかってきます。
ドイツ在住でシングルペアレント、または予備軍の方々は、上記支援制度を受給できるのであれば申請し、受給中はしっかりと自立した生活ができるよう、仕事のスキル向上や、生活の質向上を是非視野に入れて進んでみてくださいね。
どなたかの参考になれば、幸いです。
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