我が家の娘は、1-5年生までドイツのWaldorfschule(シュタイナー学校)へ通い、その後6年生から別の州の私立のギムナジウムへ転校しています。編入の際の学校探しのポイントとして、知っておいた方が良いことがいくつかありましたので、メモ書きしておきます。
将来、どなたかのご家族のご参考になれば嬉しいです。
ではさくっと目次です。
ドイツ国内の私立学校探しは、タイミングが超重要。
ドイツ国内の学校探しは、学校探しの開始時期が最大級に重要です。(1年前から開始が理想的)※ドイツの学校は9月始まり
学校探しが早ければ早いほど良いのですが、その理由は4つです。
- 各学校が設定している「Tag der offenen Tür(オープンデー・学校見学会)」に参加することができる。
- 各学校の「Schnuppertag・Probetag(トライアルデー・体験入学)」に参加することができる。
- 編入の場合、現状の学力がギリギリの場合は、転校までがっつり予習復習して学力を伸ばせる時間をとれる。
- 住居探しと引っ越し準備に時間をかけることができる。
1.Tag der offenen Tür(学校見学会)
通常、私立校の場合(公立学校もそうかもしれません)1月前後に学校のオープンデーが設定されています。
この学校のオープンデーに参加することによって、学校内の見学、学校の授業内容や費用の説明などもそうですが、実際に生徒が授業を受けている風景を見ることもできる学校もあります。
ホームページから得る情報よりも、相当な情報量を得られますため、メリットしかありません。
我が家の場合、7月末で学年が終わるというのに、3月初頭まで「転校する・引越をする」ということを一切考えていなかったがために、この各学校が設定しているオープンデーに、全て参加するタイミングを逃しました。(理由は後日別記事にします)
2.Schnuppertag(体験入学)
私立の学校ですと、入学するにあたっての各条件(後述します)が揃っていれば、1日または2日間にわたって体験入学することができます。
ここで、1日がどんな流れで進むのか、授業&生徒の雰囲気はどうか、先生の教え方はどうかなど、本人が体験することができます。
上記1と同じくメリットしかありません。(ちなみに有料です。我が家の場合は丸1日8:30-15:30で確か30€位でした。昼食費込みです)
学校探しが早ければ、この体験入学をいくつかの学校ですることができ、より学校選定することが楽になるかと思います。
3.転校まで予習・復習する時間をとれる。
我が家の場合は、教科書も成績表もなければ、普通の公立学校よりも大分遅く授業内容が進むWaldorfschuleからの転校でした。
娘の強い希望でギムナジウム(Gymnasium・進学コース)を探し始めましたが、普通の公立学校で使われている教科書を自宅学習するのには、若干時間が短すぎました。
結局6年生に無事に編入できたものの、その後1年間、塾(Schülerhilfe)に通う必要がありました。ドイツでは、相当成績が悪くないと塾には通わないのですが、1科目ではなかったため結構痛い出費でした。(算数は月40ユーロ、フランス語は月100€位。語学の方が高い)
4.住居探しと引越準備の時間的ゆとり
公立学校の場合、学校の校区内に住所があれば、編入条件こそあれど(6年生に空きがあり、5年生からの第三か国語をすでに勉強しているなど)とりあえずは編入申請はできます。
しかし、ミュンヘンは特にアパート探しの激戦都市(倍率30-200倍)。
行ける公立学校があっても近場に住所がなければ、申請を受け付けてもらえないかと思います。(例外があるかもしれませんので、各学校に確認してください)
私立学校の場合、居住地は通える範囲内であればどこでも良いのですが(片道1時間以上かけて通ってくる生徒もいる)、
ミュンヘンの場合は、特に市内中心部に近い場所でも、アパート探しは争奪戦になるため、短期間で探す場合はかなり焦ります。
見つからない場合は、郊外のFerienwohnung(期間限定の家具付きアパート・FW)に住みながら探す、という手もあります。
最悪、FWも見つからなかった場合は、airbnbで部屋を探す手もあります。あくまでも、最終手段ですが。
私の場合は事業をしているので、各関係機関に登録している住所を変更する手間などを考えると、最初から定住できるアパートを探していたため、FWは選択肢にはありませんでした。
また、若者や単身者によくあるWG(Wohngemeinschaft・シェアアパート)も同じ理由で候補外でした。
早い段階で行きたい私立の学校が決まっていれば、このアパート探しをもっとゆとりをもって行うことができ、更には学校探しと同じくらいストレス度合の高い「引越準備」に、もっと時間をかけることができました。
ドイツ国内の私立&公立学校への編入は、編入学年&履修した第三カ国語次第。(Gymnasiumの場合)
以前にも記事に書きましたが、ドイツの学校システムは日本とは全く違うものです。
すでに小学校3年生または4年生で、自分の将来の進路選択を迫られ、決断できなければ大抵の親がそうするように、5年生からは「Gymnasiumギムナジウム」という進学コースに進むことが多いかもしれません。
我が家の場合は、逆パターンでして、娘の強い強い希望で「Gymnasium(ギムナジウム)」への編入を考えていました。
当時、学習速度の遅いWaldorfschuleの5年生から、普通のGymnasiumの6年生への編入ができるとは、個人的には到底思っておりませんでした。それは、以前にも書きましたが、公立のGymnasiumで使われる教科書内容が難しいと本人が感じていたのと、引越し先のバイエルン州のGymnasiumがドイツ国内で一番レベルが高いと知ったからです。
ただ、勉強に対する娘の強い意志を尊重したく、親として最大限のベストを尽くしたかったため、学校探しのストレスでハゲそうになりながら探し出した学校で、今は娘も私も幸せな学校生活を送っています。
そんなストレス三昧だった、6年生からの学校編入。
以下、途中編入で知っておいた方が良いことを書いておこうと思います。
- そもそも5年生から始まる公立のGymnasium(ギムナジウム)。翌年6年生に空きはほとんど出ない。
- 5年生から始まる第三か国語。ラテン語・フランス語・スペイン語・英語のどれかのベースができていないと断られる。
- ドイツ語力にハンディがある場合、学校にある補習クラス(公立なら無料だと思う)または個人レッスン(有料)を受ける必要がある。
6年生に空きはほとんど出ない。
公立&私立関係なく、Gymnasium(ギムナジウム・進学コース)は5年生から始まります。親に決められてギムナジウムに通うことになった子、学力に問題がなかったためとりあえずギムナジウムに通う子、明確な目的意識があってギムナジウムに通う子、と様々。
それゆえ、5年生/6年生の2年間は、ある意味お試し期間のようなものでもあるようで、この2年間で勉強についていけなかった場合は、大体7年生でRealschuleやMitterschule(Hauptschule)などへ転校したりする子が出てきます。
稀に親の引越、子どもの意思等で6年生ですでに転校する子もいるそうですが、自分の子どもが編入したい時期(我が家の場合6年生)に編入したい学校に空きがなければ、容赦なく断られました。
特に私立校は、授業のクオリティを保つため、1クラスの人数を制限しているという理由もあります。
5年生から始まる第三か国語。
公立&私立関係なく学校の特色によりますが、大体5年生から第三か国語をアカデミックに勉強し始めます。
例えばラテン語を5年生から始めている学校に関しては、6年生からの編入は認められませんでした。電話先の担当者の方は、その事実をかなり厳しい口調で伝えてくれました。
フランス語・スペイン語に関しては、両親の母国語であったり、または幼い頃から話すことができている場合、編入時のハードルは下がると思います。
英語に関しても同じで、公立学校でも低学年からある程度始めていることも多いこともあり、編入時にそれほどハードルは高くはないかと思います。
我が家の娘の場合、Waldorfschuleでロシア語を勉強し、英語に関しては1年生から始まり、5年生の英語の授業が荒れに荒れていたため(先生が悲惨だったのですが)ほとんど身についていませんでした。強いて言えば、本人が好んで英語の音読、英語の音楽、英語の映画を視聴していたので(Waldorfschuleのデジタル機器排除の暗黙の了解の中、我が家は真逆を行っていましたが)、6年生の編入時には、ある程度は理解できていました。
ドイツ語力にハンディがある場合。
これに関しては、本人に相当な努力が求められるかと思います。言語習得を楽しいと感じる子であれば問題ないですが、それでも両親のサポートは必要になるかと思います。
公立学校にはドイツ語補習クラスはあるかと思いますが、基本的にドイツ語を母国語としない家庭の生徒が集まって学習するため(RealschuleやHauptschuleだけかもしれません)、ご家庭内では各々の言語を日々話していますので、ドイツ語力の精度を求めるのであれば、個人レッスンの方が良いかと個人的には思います。
また、編入時期にもよりますが、例えば6年生からの編入でドイツ語力がゼロである場合、個人的にはどういった環境を用意するか、かなり気を使います。
これに関して誤解を恐れずに理由を書くのであれば、以下の通りです。参考にしてください。
大前提として、子どもにドイツで学業を修めることを目的とした移住の場合です。
- ドイツ語力の精度が高ければ高いほど、ドイツ人社会で認められる確率が上がる。(面接・就職・公の場での発言など)
- ドイツ語を母国語としない子どもたちが集団で勉強する場合、間違ったドイツ語文法での会話が身についてしまう。※ドイツ語補習クラスとは別だが、ドイツ人ママ友の子どもが学力の低い学校へ転校した際に、子どものドイツ語文法があっという間に間違いだらけになり嘆いていたことを教訓にしています。学習環境は本当に大事です。)
- 6年生というティーン女子の多感な時期に、良くも悪くも、ドイツとは異なる各々の違文化や習慣に影響される可能性もある。(男尊女卑思考や非合法の嗜好品摂取など)
- そもそも、ドイツ語補習クラスに行っている間は、本来するべき学業がおろそかになってしまう。
ということで、公立学校は無料ですが、Gymnasium・Realschule・Hauptschuleでは通ってくる子供たちの学力が違うのと、日本での学校生活とは比にならないほど、良くも悪くも多種多様な文化、価値観を持つ子どもたちに出会うことになります。各国の教育水準・生活水準・基本的価値観が先進国である日本とは大きく違うこともあるため、日本での「普通」や「当たり前」、「あって当然」は、同じ先進国であれど、ドイツでは滅多にないことを知っておいた方が良いかもしれません。
個人的には、ドイツ滞在期間が決まっているのであれば、子どもへのストレス軽減を考慮すると、日本人学校やインターナショナルスクールなどの選択肢も、ありかと思います。
まとめ。
いかがでしたでしょうか。
今回は、ドイツの現地公立&私立校への編入についてでした。
- 学校探し開始時期はできれば一年前から(ドイツのBW州・BW州の学校は9月始まり※日本人学校の場合はドイツでも4月始まり)
- 編入時期(学年)によっては、第三カ国語履修経験がカギ
- 編入時期によるが、ドイツ語補習クラスへ通う必要があるのなら、学習環境を知っておく必要がある
情報をぐっと盛り込んでしまったので、もしかするとこれから移住を視野に入れていらっしゃる方には、多すぎたかもしれません。思考停止にならないことを祈ります。
余談ですが、私にとって娘の学校探しは、「彼女が一番彼女らしく成長できる環境の選択肢を与えること」に尽きます。
ただ、それには自分自身の「リサーチ力」「言語力」「コミュニケーション力」そして「行動力」が必要になってきます。
ドイツ在住はすでに通算11年、2度目の移住からは8年経過していますが、今回の娘の学校編入については本当にストレスフルでした。
なぜなら、情報収集においては、ゼロから自分一人だけで行ったからです。
あまりにも緊張状態が続いたので、本気でハゲるかと思いました。
「教育」は大切です。
「環境」も大切です。
「移民」としてこの国に移住してきたという自覚があるからこそ、「ドイツ」という国で自分の子どもを育て上げるという責任感は半端なものではありません。プレッシャーには慣れているものの、国勢は変わるものですし「教育環境」においては気が抜けません。
また、州や地域によって治安が分かれますし、学校の種類や学校によっては学力が低くなることもあります。
それでも、娘が「ドイツ」という国で、きちんと意見を発言することができ、多民族・異文化への深い理解を学ぶことができれば、未来への平和にもつながり、今後の国際社会でも立派に生き抜けるのではないかと、一抹の希望を持つ今日この頃です。
どなたかの参考になれば、嬉しいです。